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仕事論としても秀逸な良書『コンセプトのつくりかた』

concept

コンセプトの重要性を語る人はあちこちにいます。

特に、ビジネスにおいては、いつしか必須であるかのようになりました。

しかし、なぜかずっと意味がよくわからない言葉です。

そのせいか、コンセプトを考え出すと「売るための!」「ターゲットに響かせる!」といった浅いとらえ方に囚われてしまう傾向にあります。

ですが、読後にとても優しい気持ちになれる本が「コンセプトのつくりかた」を教えてくれました。


『コンセプトのつくりかた』
著者:玉樹 真一郎

本書で紹介される手法そのものは、付箋にネタを書き込み、広げていくもの。

これ自体に目新しさはあまり感じません。

しかし、ノウハウよりも重要なのが、背景にある考え方・思いです。

とても優しいものを感じる一冊なのです。

Wiiのコンセプトメイクを追体験しながら学べる本

著者の玉樹氏は、任天堂でWiiの企画担当者だった方です。

本の構成を大きく分けると、前半と後半に分かれます。

前半は、玉樹氏のコンセプトに関する考え方について。

後半は、コンセプトを実際に作った事例をWiiをテーマに、小説仕立てで紹介してくれます。

ゲームの概念を大きく変えたWiiがどのようにして生まれたのかを追体験できるのです。

そもそも「コンセプト」とは何なのか?

コンセプトに関する最初は「コンセプトとはどういうものなのか?」について書かれています。

ある意味、最も大事なところです。

まず、最初にコンセプトは

ものづくりの中に存在している

引用元:『コンセプトのつくりかた』 P.22

ものだと教えてくれます。

そう、ものづくりの一部なのです。

ここでいう「もの」は形あるものに限りません。

サービスやイベントなどの無形のものも含みます。

コンセプトの目的は「世界を良くする」こと

世界
qimono / Pixabay

そして、次に「つくりたいもの」の目的を明らかにしてくれます。

これが最も大事なところかもしれません。

「コンセプトは、世界を良くする方法」

引用元:『コンセプトのつくりかた』 P.27

「世界を良くするため」とても分かりやすくて、心に残る表現です。

こうして言葉にしてしまえば、当たり前なことかもしれません。

しかし、これほど集約された表現は類を見ないように思います。

似たような表現として「お客様第一」「顧客満足」「従業員満足」などは、今までにもたくさん目にしてきました。

「世界平和」「人類の恒久平和」などでは、自分とはまったく無関係に感じてしまいがちです。

「顧客第一」みたいなものでは、もはや「そんなの当たり前じゃないか」「よくもまぁきれいごとを…」と思えてしまい、これも力ある表現とはいえないでしょう。

私は販売促進やマーケティングには私も強い関心を持っているので、たくさんの本を読んできました。

コンセプトの定義についての様々な表現に出会ってきましたが、これほど響く表現はなかったように思います。

「良し悪し」を決めるもの

では、何をもって「良い、悪い」を判断するのでしょうか?

世界には絶対的な「良し悪し」は存在しません。

そこで、一つの解を玉樹氏は提示してくれています。

個々人の「純然たる欲求」です。

コンセプトが向かうビジョンは

その欲求が心に忠実でさえあればあるほど歓迎すべきです。他の細かいことは放っておいても構いません。

引用元:『コンセプトのつくりかた』 P.66

と、玉樹氏は言います。

ここから先はあくまで、私の勝手なまとめですが「やりたい、なんとかしたい」などは、すべて「良い」ということではないでしょうか。

その前提としておそらく、玉樹氏は「人間」という存在を信じておられるのだと思います。

このあたりは、アドラー心理学でいう「他者信頼」を実践されている現れかもしれません。

この「人間への信頼」に基づいた「コンセプトのつくりかた」は、終始一貫して優しさに満ちています。

それがこの本の読後感の心地よさに繋がるのです。

玉樹氏のコンセプト観

95ページには玉樹氏が考えるコンセプトをぎゅっと凝縮して、言葉にしてあります。

コンセプトは、ものづくりによって世界を良くする方法であり、
あなたがしあわせに生きられる方法。

数字を除く母国語の文字20字程度の言葉で表される。
素直な想いである「ビジョン」と
コンセプト実現のための手段「アイテム」からなり、
未知の良さを形にするために
「何を用いて、何をしたいか」をまとめたものである。

引用元:『コンセプトのつくりかた』 P.95

このコンセプトに至るプロセスについては、ぜひ本を読んでみてください。

あなたが「自分だけのコンセプト」を作るためにきっと役に立ちます。

コンセプトは、自分の存在価値をくれるかもしれない

では、コンセプトがあると、何が良いのでしょうか?

文中では様々な効果が紹介されていますが、その中で最も印象に残ったのがこの一文です。

世界を良くようとさえしていれば、「世界」と「あなた」が切り離されることはありません。

引用元:『コンセプトのつくりかた』 P.94

そう、世界と繋がれるのです。

これは「自分は社会に必要とされていない」「自分に存在価値がない…」と思い悩んでいる方々にとっては死活問題です。

これこそ、アドラーが言う「共同体感覚」への入り口にも繋がる思想ではないでしょうか。

コンセプトから仕事論にも通じる良書

この本は「コンセプトを作るにはこうすればいい」といった、ただのノウハウ本ではありません。

「自分を幸せにしながら、他者も幸せにするならどう考えればいいのか?」を教えてくれる本です。

仕事を真剣に考えれば考えるほど、不思議なほど「何のために生きるのか?」という問いと近づいてきます。

しかし、有史以来様々な哲学者が向き合い続けてきた問い対して、あっさりと答えを出せるわけがありません。

そこで、「世界を良くするため」という言葉の出番です。

しかも、ここで言う「良い」は世間的な良し悪しの判断基準ではありません。

自分が思う「世界がこうなったらいいのにな」を少しずつ形にしていくものです。

それが他者と繋がるとき、自分だけのコンセプト、自分だけの仕事が見えてくるのではないでしょうか。

 

この一冊、本当に良書です。

ぜひ、読んでみてください。

『コンセプトのつくりかた』
著者:玉樹 真一郎