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性格適性検査を重視した採用は、組織を脆くする

適性検査

採用試験で、誰もが一度は経験するのが「適性検査」。

今では様々なサービスが販売されています。

しかし、性格を重視して採用の合否を決めることは、本当に組織を強くするのでしょうか?

2種類に大別できる適性検査

この適性検査は、大きく2種類に分けられます。

 

  • 一般知能検査
  • 性格適性検査

一般知能検査は、学校のテストのような検査です。

内容もよくある国語・算数などの問題やIQテストのようなものもあります。

もう一方の性格適性検査は、パーソナリティー心理学の知見を活用し、求職者の性格特性で適性を測るものです。

厚生労働省は性格での合否を許していない

許していない
geralt / Pixabay

しかし、厚生労働省の指針により性格で採用の合否判断をすることは許されていません。

だからこそ、「性格検査」とせずに「適性検査」という表現をされています。

厚生労働省の指針を順守する熊本労働局のサイトにもこう明記してあります。

「血液型・星座」と性格とは科学的根拠に裏付けられたものではなく、職務能力とは全く関係のないものです。

引用元:熊本労働局|公正な採用選考のために

にもかかわらず、昨今では性格適性検査が企業側で強化されています。

入社後に鬱などを発症されると困るので、そのリスクを少しでも回避したいがためというのが大きな要因です。

性格による選別はおすすめしない

私も「真に意義ある採用手法」について真剣に研究する過程で、この適性検査についても調べていました。

現時点の結論としては、職務適性を性格で判断することはおすすめしません。

かといって、厚労省におもねるわけではありません。

脆弱な組織を形作る原因になることが判明してきたからです。

組織の均一化は脆さと紙一重

特定の性格の人を集めると、どんな組織になるのでしょうか?

例えば、ある組織が外向性の高い人を好んで採用し続けたとします。

この採用方針からもっと外れていくのは、神経症傾向が低い方でしょう。

すると、どんな組織になるでしょうか?

次々と新しいことを始めるばかりで、内省をしない傾向に傾いていくでしょう。

また、日々の業務に潜む、様々なリスクに気づくことも少なくなります。

いつか、大きな事故やトラブルに見舞われることが安易に想像できます。

その逆もまた然り。

神経症傾向が高い人だけ集めてしまっても、問題は起こります。

思考が偏るだけで、実際の動きに昇華できないままになるかもしれません。

結局、どちらの特性も組織にはいてくれた方がいいのです。

「うちの営業部で成績を上げている人はこういう性格の人が多いから、同じような人を集めよう」
という単一化は、大きな脆さを内包します。

自然界では当たり前

これは自然界では、ごく当たり前に起こっていることです。

生存競争の厳しい自然界では、多様性が生き残る術。

ビッグファイブ理論で表せる5つの性格特性因子は、それぞれの特徴の持ち主が協力しあうのが有効なのです。

性格適性検査は、選別に使うことは有効ではありません。

むしろ、自分とは違う他者を理解し、協力関係を築くツールに使うものです。

管理のしやすさを優先し、脆さを許容する?

たしかに、確かに均一の方が管理しやすくなります。

経営者が優秀な間はそれで持つでしょう。

しかし、拡大成長していくうちに、いつかは経営者の目が届かないところが出てきます。

管理型には限界があるのです。

そもそも、管理できないことが世の中にはあまりに多いのですから…。

性格は選別よりも活かし方を見出すことに使う

さまざまな研究者の知見が切り開きつつあるパーソナリティ研究。

選別にだけ使うのはあまりにもったいないです。

自分と違う他者との協力をするために、ぜひとも活用してください。

選考時に適性検査を課すのではなく、入社時にこそ実施するといいでしょう。

配属される部署の全員がお互いの特性を知ることこそが有益です。

多様性を許容するために「違いの見える化」が有効ではないだろうか?

多様性

高さ170cmの棚に、他者の背丈が届かないことで怒りを覚える人はいるでしょうか?

多くの人は「身長によっては届かなくても仕方ないよね」という理解をするだけでしょう。

日常生活の中でも、身長の低い人が高い人に「タンスの上の〇〇を取って」と依頼することは、ごく自然なものです。

ところが、これが「性格」となると話が全く違ってきます。

「わからない」ことがトラブルを生む?

「身長」という特徴は、物理的なもので誰が見てもわかる違いです。

だからこそ、健全な諦めが可能です。

一方、性格は見ただけではわかりません。

この「わからなさ」が人間関係の様々なトラブルの温床になりがちなのです。

例えば、ビッグファイブ理論における特徴の違い。

外向性が高い人は、自分の外部に刺激を求める傾向にあります。

  • 人がたくさん集まるパーティーが好き
  • 絶叫マシンのような激しいアトラクションを好む
  • 一夜限りの恋を求めることもある
    (他の4つの因子とも関連するので、外向性だけでは決まりませんが、あえて単純化します)

外向性が低い人からすれば、外向性が高い人の上記のような行動は理解ができません。

性格への遺伝の影響を知らなければ「なんであいつはいつも落ち着きがないんだ!」とただ怒りを覚えるだけになることもあるでしょう。

しかし、相手を突き動かしているものの半分が「遺伝」だとわかると、しぶしぶながらもある程度は「仕方ないよね…」と健全な諦めに至ることも多いのです。

身長の高さという身体的特徴を変えようとしないことと同じで、相手を変えようとしなくなることの方が有益なことは少なくありません。

変えにくいものに注力するよりも、変えやすいものに注力した方が明らかに効率的ですから。

遺伝が影響するのは、身長9割、性格5割

双子
AdinaVoicu / Pixabay

遺伝の影響を研究する分野では、別々に育てられた一卵性双生児研究の類似性があります。

その研究の結果の一例として

身長では9割、外向性などの主要な5割、推理や空間把握能力は4割台、記憶や言語能力では3割台

引用元:『だまされ上手が生き残る 入門! 進化心理学』P.63

という説があります。

「身長が決まる要因の9割が遺伝の影響」だということに、違和感を覚える人は少ないでしょう。

だからといって、全く変えられないわけではありませんが、非常に変えにくいものであることも事実でしょう。

一方、性格は5割。

半分ですから、これを多いと感じるか、少ないと感じるかは人それぞれでしょう。

どちらにせよ、人間の性格の半分が遺伝の影響を受けているというのは事実です。

遺伝的な影響を「見える化」するのがビッグファイブ理論

その生まれ持った特徴は、日常では断片的に「行動」として垣間見えるだけです。

数値として「見える化」するために有効な一つ手法がビッグファイブ理論なのです。

実際、パーソナリティ心理学を学ぶことで、人付き合いはとてもラクになります。

自分と違う人の行動パターンを許容できる幅が増えます。

私の友人に、非常にマイペースで行動的な人がいます。

ただ、ちょっと周囲への配慮が薄く、マイペース過ぎる傾向にあります。

以前の私であれば「あいつはなんでこうなんだ」と怒りを覚えていたことでしょう。

しかし、今では「外向性と経験への開放性の高さと、共感性、神経症傾向の低さがあの行動を生んでいるんだな」と理解できます。

ある程度行動パターンを理解できるからこそ、行動を予測して準備やフォローも可能となるのです。

相互理解が他者との協力の基盤となる

お互いが違いを把握していれば、「なんでアイツは!」という怒りを覚える機会は大幅に減ります。

身長と同じで、後天的にあまり変えようがないものに対して、怒りを抱くことは少ないものです。

「なんでアイツは身長が低いんだ!」と怒ったところで、何の意味もありません。

また、不用意に「相手を変えよう」ともしなくなります。

「変えよう」というのは、部分的には「現状の否定」でもあります。

否定しにかかってくる人間と良好な関係を結べる人は、きわめて稀なもの。

不用意に他者を変えようとアプローチをすることは、トラブルを量産するだけです。

他者との違いを理解できるようになることが多様性と付き合える入り口となるでしょう。

身長のような見ればわかる違いが問題になることはありません。

性格はすぐに目に見えないからこそ、できる範囲の数値化が有効ではないでしょうか。

 

『だまされ上手が生き残る 入門! 進化心理学』
著者:石川 幹人

自分の性格を変えたい人は、パーソナリティ心理学を学ぼう

パーソナリティ心理学

「自分の性格を変えたい」という方は意外と多くおられます。

自分の性格が嫌いな人に会うことも決して少なくありません。

このような方々にこそ強くお勧めしたいのが、パーソナリティ心理学を学ぶことです。

この分野にはMBTIやエニアグラム、DiSC理論など、さまざまな分析の仕方があります。

どれも実用的な分析ですが、昨今の心理学の趨勢から、特性5因子理論(ビッグファイブ)を学ぶのが最も有益だと私は考えています。

学び始めに最適の一冊

比較的読みやすくて、詳しいのがこの本。

『パーソナリティを科学する 特性5因子であなたがわかる』
著者:ダニエル・ネトル

著者のダニエル・ネトル氏は、英国ニューカッスル大学生物心理学部の専門家。

日本では2009年に出版された本なので、現在ではより研究が進んでいるかもしれません。

それでもなお、特性5因子理論(ビッグファイブ)を学び始めるのには、とても良質な一冊です。

特性5因子理論(ビッグファイブ)診断

ビッグファイブは、人の性格特性を5つの因子で表します。

  1. 外向性
  2. 神経質傾向
  3. 誠実性
  4. 調和性
  5. 経験への開放性

診断方法は、簡易なものから専門的なものまでをまとめていますので、こちらをご覧ください。

性格の50%は遺伝で決まる。だからこそ、自分の特徴は掴んでおこう

それぞれの数値がすべて高いほど良いのかというと、そうではありません。

全ての特性について高い場合も低い場合も、メリットとコストの両方が存在するのです。

だからこそ、自身の特性を知ることが重要なのです。

生きるコツとは、これらのコストにうまく対処し、ともに生き、押しつぶされないようにすることである。

引用元:『パーソナリティを科学する 特性5因子であなたがわかる』P.141

自分の性格に悩みがちな人の強み

神経質
geralt / Pixabay

往々にして、自分の性格を思い悩む人の多くは「神経質傾向」が高い人です。

ひと言で表現するなら「ネガティブな情動への反応が強い人」です。

何かをすることで獲得できそうな報酬や性的興奮、知的好奇心よりも、不安への反応が勝る傾向を持っているのです。

これだけを見ると自分の性格をより嫌ってしまうかもしれませんが、当然ながら神経質傾向が高い人にはメリットもあります。

厳しい環境下で生存確率が高くなる

神経質傾向が低すぎると、死亡率を増大させることが知られています。
リスクに気づかなかったり、楽観的なあまり危険を放置するため生存確率が下がるのです。

ものごとの現状が正しくないと感じ、変えたいと強く思う

だからこそ、自身がかかわる領域で革新者となる可能性が高いのです。

失敗への恐れをバネにとてつもない努力を果たし、成果をあげる

取りつかれたように仕事をする人がいます。
当然ながら、その中で着実に結果を出していきます。

最も注目すべきは「現実を冷静に見極める力」

中でも、神経質傾向が高い人の特徴は、現実を冷静に見極める力を有すること。

ものごとを楽観的に見ないので、人間が陥りがちな「不確かな思い込み」に目が曇ることが少ないのです。

この能力は、仕事において必ず役立ちます。

株で勝っている人に、神経質傾向が高い人が多いのは有名な話。

他に専門知識を詳細に学ぶ研究分野でも活かせるでしょう。

社内のさまざまな危険に気づき、事故が起きる前に対策を講じることもできるでしょう。

しかし、「ポジティブ信奉者」は、神経質傾向の特徴を一笑に付すことでしょう。

何らかの具申をした記録を残しておいて、放っておきましょう。

いつか困るのは、ポジティブ信奉者ですから…。

性格を変えることより特徴を活かす術を見つけられる

性格の半分は、持って生まれたものです。

身長や体格、顔の形と同じで、大きくは変えようがありません。

だからこそ、それらを活かす術を学びましょう。

そのための大きなヒントが特性5因子モデル(ビッグファイブ理論)にはありますよ。

『パーソナリティを科学する 特性5因子であなたがわかる』
著者:ダニエル・ネトル

腰痛でお悩みの方にぜひ読んでほしい『腰痛診療ガイドライン』

腰痛

健康食品や健康サービスを買う前に、根拠があるのかどうかを調べる時に有効なサイトは以前にもご紹介しました。

健康を求めて商品を買う前に、必ず一度は見ておくべき3つのサイト

同じように、様々な治療法についても根拠を示しながら、情報を公開してくれているサイトを探していました。

すると、元・医療関係者の知人があるサイトを教えてくれました。

医療関係者が閲覧するためのサイト

医療情報サービスMinds(マインズ)

厚生労働省から事業委託を受けた組織が科学的根拠に基づき、情報発信をしてくれているサイトです。

私は存在を知らなったのですが、10年以上も前から公開されていたのですね。

ここでは本来なら医療関係者が閲覧する情報まで読むことができます。

とはいえ、私たちは素人ですから、これらの情報だけで独断してはいけないことは確かです。

しかし、参考になる情報がこうして公開されていることは知っておいて損はありません。

腰痛の人は必見『腰痛診療ガイドライン 2012』

例えば、腰痛でお困りの方は、ぜひ一度この『腰痛診療ガイドライン 2012』を読んでおくといいでしょう。

章立ては以下の通り。

  • 第1章 定義
  • 第2章 疫学
  • 第3章 診断
  • 第4章 治療
  • 第5章 予防

すでに腰痛でお困りの方が必要とするのは、第4章の「治療」でしょう。

腰痛に有効だという根拠がある治療について

目次を列挙しますので、気になる箇所があればぜひ読んでみてください。

CQ 8. 腰痛の治療に安静は必要か
CQ 9. 腰痛に薬物療法は有効か
CQ 10. 腰痛に物理・装具療法は有効か
CQ 11. 腰痛に運動療法は有効か
CQ 12. 腰痛に患者教育と心理行動的アプローチ(認知行動療法)は有効か
CQ 13. 腰痛に神経ブロック・注射療法は有効か
CQ 14. 腰痛に手術療法(脊椎固定術)は有効か
CQ 15. 腰痛に代替療法は有効か
CQ 16. 腰痛の治療評価法で有用なものは何か

引用元:『腰痛診療ガイドライン 2012』

専門家にとって当たり前なことかもしれませが、私のような素人にとっては、驚く内容が少なくありません。

治療
SilasCamargo / Pixabay

急性腰痛には安静が必ずしも有効な治療法とはいえない

腰痛のときは、ゆっくり休むといいのだと思い込んでいました。

ところが「ベッドの上で安静にする」のは効果が低いという報告があるだそうです。

むしろ、無理のない範囲で、活動を維持した方がよいというのは、本当に驚きです。

運動療法が急性腰痛に効果がないけど、慢性腰痛に効果がある(しかも、有効なエビデンスも存在する!)

急性腰痛について「運動療法が痛みの軽減に差がない上に、機能回復にも効果が認められない」とはっきり書かれています。

でも、慢性腰痛には「効果がある」と明記されています。

急性と慢性では、対応策が全く違ってくるのですね。

運動の種類によって効果の差が認められない

腰を曲げるか伸ばすかという運動の違いは、効果の大小にあまり関係がないとのこと。

これも驚きです。

どの運動が最も効果があるのか?を追求するよりも、まずは運動をすることが先決なようです。

認知行動療法は、亜急性・慢性腰痛の治療に有用である

腰痛で心理療法が出てくるとは思いませんでした。

しかも、有効であるというエビデンスが複数あることにも驚きです。

結局、自分で運動する習慣を少しずつでもつけることが有効なのですね。

上記に紹介したのは、本当にごく一部です。

ぜひ、気になった箇所を読み込んでみてください。

ただ、運営母体は天下り先としてWeb上では叩かれている

 

最後に、このサイトの運営母体が気になりました。

法人名は「公益財団法人日本医療機能評価機構」。

どうやら、病院の評価を下している組織のようです。

WEB上では「ただの天下り先だから、存在価値なし」などと叩かれています。

疑問を抱く人は、他にもいるようで、Yahoo知恵袋にも以下のような質問があるほどです。

病院機能評価を取得することはどういったメリットが誰にあるのですか?

機能評価をしてもらった認定をもらうために、数百万も払えと言われたら、誰でも疑問を抱くことでしょう。

しかし、医療関係の情報を握っているのは確かです。

実際、医療情報サービスMinds(マインズ) は、非常に参考になります。

情報に罪はありませんから、ぜひとも活用させてもらいましょう。

仕事論としても秀逸な良書『コンセプトのつくりかた』

concept

コンセプトの重要性を語る人はあちこちにいます。

特に、ビジネスにおいては、いつしか必須であるかのようになりました。

しかし、なぜかずっと意味がよくわからない言葉です。

そのせいか、コンセプトを考え出すと「売るための!」「ターゲットに響かせる!」といった浅いとらえ方に囚われてしまう傾向にあります。

ですが、読後にとても優しい気持ちになれる本が「コンセプトのつくりかた」を教えてくれました。


『コンセプトのつくりかた』
著者:玉樹 真一郎

本書で紹介される手法そのものは、付箋にネタを書き込み、広げていくもの。

これ自体に目新しさはあまり感じません。

しかし、ノウハウよりも重要なのが、背景にある考え方・思いです。

とても優しいものを感じる一冊なのです。

Wiiのコンセプトメイクを追体験しながら学べる本

著者の玉樹氏は、任天堂でWiiの企画担当者だった方です。

本の構成を大きく分けると、前半と後半に分かれます。

前半は、玉樹氏のコンセプトに関する考え方について。

後半は、コンセプトを実際に作った事例をWiiをテーマに、小説仕立てで紹介してくれます。

ゲームの概念を大きく変えたWiiがどのようにして生まれたのかを追体験できるのです。

そもそも「コンセプト」とは何なのか?

コンセプトに関する最初は「コンセプトとはどういうものなのか?」について書かれています。

ある意味、最も大事なところです。

まず、最初にコンセプトは

ものづくりの中に存在している

引用元:『コンセプトのつくりかた』 P.22

ものだと教えてくれます。

そう、ものづくりの一部なのです。

ここでいう「もの」は形あるものに限りません。

サービスやイベントなどの無形のものも含みます。

コンセプトの目的は「世界を良くする」こと

世界
qimono / Pixabay

そして、次に「つくりたいもの」の目的を明らかにしてくれます。

これが最も大事なところかもしれません。

「コンセプトは、世界を良くする方法」

引用元:『コンセプトのつくりかた』 P.27

「世界を良くするため」とても分かりやすくて、心に残る表現です。

こうして言葉にしてしまえば、当たり前なことかもしれません。

しかし、これほど集約された表現は類を見ないように思います。

似たような表現として「お客様第一」「顧客満足」「従業員満足」などは、今までにもたくさん目にしてきました。

「世界平和」「人類の恒久平和」などでは、自分とはまったく無関係に感じてしまいがちです。

「顧客第一」みたいなものでは、もはや「そんなの当たり前じゃないか」「よくもまぁきれいごとを…」と思えてしまい、これも力ある表現とはいえないでしょう。

私は販売促進やマーケティングには私も強い関心を持っているので、たくさんの本を読んできました。

コンセプトの定義についての様々な表現に出会ってきましたが、これほど響く表現はなかったように思います。

「良し悪し」を決めるもの

では、何をもって「良い、悪い」を判断するのでしょうか?

世界には絶対的な「良し悪し」は存在しません。

そこで、一つの解を玉樹氏は提示してくれています。

個々人の「純然たる欲求」です。

コンセプトが向かうビジョンは

その欲求が心に忠実でさえあればあるほど歓迎すべきです。他の細かいことは放っておいても構いません。

引用元:『コンセプトのつくりかた』 P.66

と、玉樹氏は言います。

ここから先はあくまで、私の勝手なまとめですが「やりたい、なんとかしたい」などは、すべて「良い」ということではないでしょうか。

その前提としておそらく、玉樹氏は「人間」という存在を信じておられるのだと思います。

このあたりは、アドラー心理学でいう「他者信頼」を実践されている現れかもしれません。

この「人間への信頼」に基づいた「コンセプトのつくりかた」は、終始一貫して優しさに満ちています。

それがこの本の読後感の心地よさに繋がるのです。

玉樹氏のコンセプト観

95ページには玉樹氏が考えるコンセプトをぎゅっと凝縮して、言葉にしてあります。

コンセプトは、ものづくりによって世界を良くする方法であり、
あなたがしあわせに生きられる方法。

数字を除く母国語の文字20字程度の言葉で表される。
素直な想いである「ビジョン」と
コンセプト実現のための手段「アイテム」からなり、
未知の良さを形にするために
「何を用いて、何をしたいか」をまとめたものである。

引用元:『コンセプトのつくりかた』 P.95

このコンセプトに至るプロセスについては、ぜひ本を読んでみてください。

あなたが「自分だけのコンセプト」を作るためにきっと役に立ちます。

コンセプトは、自分の存在価値をくれるかもしれない

では、コンセプトがあると、何が良いのでしょうか?

文中では様々な効果が紹介されていますが、その中で最も印象に残ったのがこの一文です。

世界を良くようとさえしていれば、「世界」と「あなた」が切り離されることはありません。

引用元:『コンセプトのつくりかた』 P.94

そう、世界と繋がれるのです。

これは「自分は社会に必要とされていない」「自分に存在価値がない…」と思い悩んでいる方々にとっては死活問題です。

これこそ、アドラーが言う「共同体感覚」への入り口にも繋がる思想ではないでしょうか。

コンセプトから仕事論にも通じる良書

この本は「コンセプトを作るにはこうすればいい」といった、ただのノウハウ本ではありません。

「自分を幸せにしながら、他者も幸せにするならどう考えればいいのか?」を教えてくれる本です。

仕事を真剣に考えれば考えるほど、不思議なほど「何のために生きるのか?」という問いと近づいてきます。

しかし、有史以来様々な哲学者が向き合い続けてきた問い対して、あっさりと答えを出せるわけがありません。

そこで、「世界を良くするため」という言葉の出番です。

しかも、ここで言う「良い」は世間的な良し悪しの判断基準ではありません。

自分が思う「世界がこうなったらいいのにな」を少しずつ形にしていくものです。

それが他者と繋がるとき、自分だけのコンセプト、自分だけの仕事が見えてくるのではないでしょうか。

 

この一冊、本当に良書です。

ぜひ、読んでみてください。

『コンセプトのつくりかた』
著者:玉樹 真一郎

正義を振りかざしてはいるが、ヒマ人ではないかもしれない

sjw

「正義のヒマ人は、どんな人なのか?」という話をつい先日、友人と繰り広げていました。

「正義のヒマ人」とは、ネット上で炎上に参加する方々のことを指しているのだとか。

英語で、Social Justice Warrior(ソーシャル・ジャスティス・ウォリアー 略称:SJW)という俗語までできています。

少し調べてみて驚いたのですが、ネット上の炎上について真剣に研究している方々がおられるのです!

今回はそれらの文献から見えてきたことをご紹介します。

そもそも「ヒマ人」ではないかもしれない

最も驚いたのが、国際大学グローバル・コミュニケーション・センター助教の山口真一氏の論文です。

実証分析による炎上の実態と炎上加担者属性の検証

約20,000人のアンケート調査データから導かれてきた「炎上加担者」の人物像に驚きました。

  • 年収が多く
  • ラジオをよく利用する
  • ソーシャルメディアをよく利用する
  • 掲示板に書き込む
  • インターネット上でい やな思いをしたことがある
  • 非難しあっても良いと考 えている
  • 若い子持ちの男性

年収が多いということは、それだけ働いているわけです。当然ながらヒマを持て余すということはないでしょう。

「正義のヒマ人」と言われていますが、「ただヒマだから他者を叩く」というわけではないのかもしれません。

ヒマなわけではないことについて、山口氏はもう一つの分析結果も示してくれています。

インターネット全体の利用時間は炎上加担行動に有意な影響を与えていない。

引用元:実証分析による炎上の実態と炎上加担者属性の検証

炎上加担者と無関係な人のインターネットの利用時間を比べても、その違いに傾向はなかったというのです。

「ヒマだからネットに入り浸っている人」が炎上加担者というわけでもないのです。

学歴も関係ない

また、よく聞く論調としての「低能だから騒いでいる」という点においても、山口氏は違った主張をされています。

関係がないとされる条件

  • 学歴
  • 結婚の有無
  • 一人暮らしか否か
  • 都市圏に住んでいるかどうか

これらは炎上に加担する人の特徴として共通するものではないという分析です。

山口氏ははっきりとこう書かれています。

炎上加担行動に、学力水準は影響を与えていない。

引用元:実証分析による炎上の実態と炎上加担者属性の検証

ではなぜ炎上に加担するのか?

炎上の原因について、別の二人の研究者による論文を見つけました。

慶應義塾大学政策・メディア研究科 特任准教授の田代光輝氏と、
関東学院大学人間共生学部 コミュニケーション学科の准教授である折田明子氏です。

お二人の研究によると、

田代や伊地知は、炎上の原因に「反社会的な行為」「知ったかぶり」「特定ターゲットへの悪口・軽蔑」「提灯記事」「利益誘導」をあげている。

引用元:ネット炎上の発生過程と収束過程に関する一考察 ~不具合に対する嫌がらせと決着による収束~

という引用箇所があります。

続けて、ネット上は

自分にとって心地よい情報だけを見ることができる

場所であると書いておられます。

いつもならネット上で、自分に趣味趣向にあった「心地よい情報だけ」を見ることができます。

しかし、そこで「自分とは違う価値観の存在」を文字や映像などで突きつけられることで、

懲らしめたい・直したいという衝動が起こる。

引用元:ネット炎上の発生過程と収束過程に関する一考察 ~不具合に対する嫌がらせと決着による収束~

とされています。

本来、他者と自分は違って当たり前です。

その違いを許容できないのはなぜなのでしょうか…。

この点に関する考察はまだ見つけられていません。

素人考えでは「自己評価の低さ」が原因?

私の素人考えとしては「自己評価の低さ」だと考えています。

自己評価が低いからこそ、自分と違った人を見ると否定せざるをえないのではないでしょうか。

自分に自信があれば「あいつはこう言ってる。ま、それもいいよね。私は違うけどね」で済むはずです。

執拗に攻撃をしてしまうのは、自分の存在を脅かされたと感じるからではないでしょうか。

本人は全力で否定するのでしょうが…。

炎上加担者は1.5%しか存在しない

最後に、ネット上で炎上に加担したことがある人の割合です。

私はこの数字にも驚かされました。

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炎上に加担したことのある、「 1 度書き込んだことがある」「 2 度以上書き込んだことがある」人は、わずか 303 人(約 1.5% )であった(図 3 )。

引用元:実証分析による炎上の実態と炎上加担者属性の検証

「炎上に参加しているのはネットにつながる人の1.5%だけ」しかいないのです。

98.5%はあくまで傍観者。

1 炎上事件を聞いたことがない

2 ニュースなどで聞いたが、実際の書き込みを見たことはない

3 実際の書き込みを一度だけ見たことがある(まとめサイト含む)

4 実際の書き込みを何度か見たことがある(まとめサイト含む)

炎上を知らないか、ただ見ているだけ人たちなのです。

仮に、この確率をインターネット人口にそのままあてはめてみましょう。

●インターネット利用者数、人口普及率の双方が増加
2015年末のインターネット利用者数は、2014年末より28万人増加して1億46万人(前年比0.3%増)

引用元:平成28年版 情報通信白書のポイント

日本国内だけで、約1億人がインターネット利用者です。

その1.5%が炎上加担者ですから、その数150万人。

京都市や神戸市、福岡市の人口がおおよそ150万人です。

これを少ないと見るか否かは、あなたはどう感じますか?

アンケートはあくまで回答者の自己申告

当然ながら、山口氏が分析したデータは「アンケート調査」ですから、あくまで回答者の自己申告です。

炎上に加担したことを隠して回答した人もいたかもしれません。

また、無意識に炎上に加担してしまっていることも十分ありえるでしょう。

これらの数値は反映されていません。

このあたりは、山口氏も当然理解されています。

しかし、その上でもなお、この研究論文は非常に有意義なものではないでしょうか。

天職と出会うためにアドラー心理学を活かせた人の話

tensyoku

今やすっかり有名になったアドラー心理学。2013年に『嫌われる勇気』が発売されて以来、一躍有名になりました。その反響はとても大きく、舞台化やドラマ化までされるほどです。

ただ、個人的には「ブームが早く静まらないかな」と思っています。

このアドラー心理学「実践が難しい心理学」と言われています。

アドラー心理学を理解し、実践できるようになるには「それまで生きてきた年数の半分の時間がかかる」とさえいわれているほどです。

引用元:『嫌われる勇気-自己啓発の源流「アドラー」の教え』

一過性のブームで、アドラーのメッセージを曲解した人が「ただ嫌われる人」にならないことを願うばかりです。

アドラー心理学の貴重な実践者を見つけた

実践が難しいアドラー心理学ですが、偶然読んだ本でその実践者を見つけました。

発達障害の「生き方」研究所というブログの運営者の岩本友規氏です。

彼の著書『発達障害の自分の育て方』を読んで、「まさにアドラー心理学の実践者だ」と驚きました。

岩本氏は、ご自身が発達障害(ADHD、アスペルガー症候群)で薬を飲みながらも、社会で活躍されています。この本は、彼が自分とどのように向き合い、活かし方を築いてきたのかを書いてくれている良書です。

以下が本の目次です。

【目次】

1章 大人の発達障害克服体験記

2章 あなたはこれからどう生きる?大人の発達障害の現実と未来

3章 大人の発達障害克服マニュアル

Part1 脳疲労をとって、改善の意欲をとり戻す
Part2 自立してストレスに負けない心身をつくる
Part3 天職を探す

『発達障害の自分の育て方』主婦の友社

天職探しをする前に必要なのは「自立」

私が注目したのが3章のPart2~3です。天職探しをする前にやるべきことがあると書いておられます。

それが「自立」

しかし、ここでいう「自立」は辞書的な意味ではありません。

じ‐りつ【自立】

他への従属から離れて独り立ちすること。他からの支配や助力を受けずに、存在すること。

引用元:デジタル大辞泉

上記のような「自立」に至る前に、まず心理的な自立を築く段階があるのだと、岩本氏は書かれています。

やはり本当の自分の生き方をするためには、まず自己本位で生きる

引用元:『発達障害の自分の育て方』 P.118

「自己本位に生きろ」というと、「自分勝手に生きろというのか?」とお怒りになる方もおられるかもしれません。

しかし、人間は本来自分勝手な存在です。その怒りも、自分で勝手に抱いた感情であることもその一つの証ともいえるでしょう。

自己本位な生き方が結果的に天職へと繋がる

自己本位になることで、自分に許可できるようになるのが「他者の目を気にせず、感情のおもむくままにやりたいことをやってみる」というもの。

初めは「どんな評判をささやかれるのだろうか…」と怖さを感じることでしょう。しかし、結果的に、大半の人からは全く関心も注目もされないものです。

それどころか、一部の方々からは強い共感を示してもらえるかもしれません。もっとごく一部の方からは「助かった」と感謝されるかもしれません。

その時、自己本位な生き方は、結果的に「他者貢献」になるのです。そう、アドラー心理学における「幸せ」を形作るうえで、要となる「他者貢献」です。

貢献感を持てて、なおかつ自分がやり続けたくなる仕事こそ、天職ではないでしょうか。

『嫌われる勇気』の続編『幸せになる勇気』で岸見氏はこのように書いておられます。

利己心を追求した先に、「他者貢献」があるのです。

引用元:『幸せになる勇気』 P.119

この一文で岸見氏が伝えたいことは岩本氏と同じだと、私は理解しています。

必要とする人が見つけてくれる

私の友人に研究者をめざして、日夜研究に励んでいる人がいます。しかし、彼の研究分野は「すぐに誰かの役に立つ」といったものではありません。

非常にマイナーな分野なので、日頃は注目されることもありません。加えて、同業の研究者の数も非常に少ないそうです。

その世界で生きていく上で、恩師が教えてくれた大事なことが下記の言葉。

「私たちの研究はすぐに人の役に立つことはない。しかし、研究を続けていれば、世界中の誰かが私たちの研究を見つけてくれる。

だから、発信していきなさい。論文を書きなさい。必要としてくれる人が必ず見つけてくれるから」

これは研究者だけでなく、全ての人に通じるメッセージではないでしょうか。

やれる範囲でいいからやりたいことをやる

人から理解されなくても、自分がやってみたいことがあれば、やれる範囲でいいのでぜひ試してみてください。それを必要とする人が世界にはきっといますから。

その時こそが、天職に近づく時となるでしょう。

性格の50%は遺伝で決まる。だからこそ、自分の特徴は掴んでおこう

geralt / Pixabay

私が「それぞれの人が自分を活かすにはどうすればいいのか?」を研究する中で、パーソナリティー心理学も学んでいます。

性格形成に教育の影響はほとんど見られない

その中で、非常に驚いたのが「性格と遺伝」に関する研究結果です。

『パーソナリティを科学する―特性5因子であなたがわかる』

作者はイギリスの大学で、生物心理学部に所属する研究者。この本によると、人の性格が形成される際、親の教育や家庭の影響はほとんど見られないというのです。

同様のことは、日本の研究者からも報告されています。

行動遺伝学、教育心理学を専門とする慶應義塾大学文学部教授の安藤寿康(あんどう じゅこう)氏。

『心はどのように遺伝するか』
『遺伝子の不都合な真実―すべての能力は遺伝である』

などの著作が有名です。

安藤氏に関する記事にも以下のような記述があります。

Q7.性格は遺伝で決まるって本当ですか?

≪中略≫こうした遺伝子の違いがどのくらい一人ひとりの性格の違いを説明するかをふたごのデータから算出すると,だいたい50%前後になります。これは残り50%が環境によることを意味します。しかし親の影響や家庭の影響(これを共有環境といいます)は先にも述べたようにほとんどみられません。

引用元:心理学ふしぎふしぎ - 公益社団法人日本心理学会

親が必死で「主体的な性格の人間になるように育てよう!」と息巻いたところで、子供の性格にはあまり影響を与えられないのです。

遺伝子が目覚める

しかし、遺伝子だけで全てが決まるわけでもありません。何らかの遺伝子を有していたとしても、その遺伝子が働かなければ、何の影響も及ぼしません。

持って生まれた遺伝子が後天的な何らかの影響を受けて、その働きを変えていくことを「エピジェネティクス」と言います。

エピジェネティクスは「DNA 配列の変化を伴わず、後天的な修飾により遺伝子発現が制御され維持される仕組み」を表す

引用元:http://www.takara-bio.co.jp/epi/pdfs/epi_0a.pdf

「遺伝子があるから」といって、何もできないわけでもないのです。

遺伝から受ける影響の一部を知る方法

それでも、遺伝の影響を受けることは確か。ならば、今の自分がどのような影響下にあるのかを知るのは有益です。

そのためのひとつの材料がパーソナリティー心理学で、ビッグファイブ・特性5因子モデルと言われる研究です。

冒頭で紹介した本もこの分野の研究に関するもの。このテストに関する専門書も読み始めれば、非常に興味深いものばかりです。

しかし、最初は先達が残してくれている研究を活用させてもらうのがいいでしょう。

本格的なBigFive診断テスト

富山大学の村上宣寛氏が非常に詳しい診断テストを作ってくれています。

外向性、協調性、良識性、情緒安定性、知的好奇心という基本的な性格の次元を測定

主要5因子性格検査(BigFive,デモ版)

10の質問に答えるだけの簡略化バージョン

また、10個の質問だけに簡略化したものを早稲田大学の小塩真司氏が公開してくれています。

小塩氏のサイト
日本語版Ten Item Personality Inventory(TIPI-J)
<回答フォーム>のTIPI-J(日本語版TIPI pdf)をクリック

J-STAGE
日本語版Ten Item Personality Inventory(TIPI-J)作成の試み

これらの診断テストを使って、自分が生まれ持った特性の一部を理解しておくことは、自分を活かす上でも有力な情報となりますよ。