すぐに実施が可能でしかも費用もかからないのに、実施している会社は意外と少ない採用方法があります。
あえてコストを挙げるなら一つだけです。
それは、社長のプライド。
このコストを投じて、やることは非常に単純です。
「現存する社員に人の紹介を依頼する」だけなのです。
「なんだ、そんなことか」と思った方もいるでしょう。
しかし、そんなことすらしていないからこそ、求人広告会社に費用を吸われ続けてしまうのです。
もっとも、費用を無駄遣いがご希望であれば止めはしませんが、せっかくお金を使うなら社員の給料に回してあげた方が有効ではないでしょうか。
紹介を受けるための必須条件とは?
社員から人材の紹介を受けるために必須の条件があります。
「社長が直々に社員へ頭を下げてお願いする」ことです。
これができれば、採用がうまくいく可能性が劇的に上がります。
例えば、下記のようなメッセージを全社員に向けて、話すことができるでしょうか?
「人口減少が続く日本において、求人広告を出しただけでは必要な人手を確保できなくなってきました。
経営者として、今後も際限なく求人広告費に金をかけ続けるより、社員に利益をもっと還元したいと強く思っています。
そこで、会社を継続して運営してくために必要な人材として友人・知人で当社に合いそうな人がいたら、紹介してください。
紹介料も払いますので、どうか力を貸してください」
上記はあくまで一例に過ぎません。しかし、これができる社長は極めて少ないものです。
日ごろ経営者として先陣を切っている矜持があるのだから当然でもあります。
ただ、自分の力だけでは限界があることも身に染みてお分かりのことと思います。
社長に全てを任せているだけで万事がうまくいっている会社は紹介依頼などしなくてもいいでしょう。
社長が「生存している間だけ」は安泰なのですから、今しばらくはそのままで問題が噴出することもないでしょう。
しかし、何でも解決できる「神様」のような万能な社長は決して多くはありません。
このあたりは経営者同友会や商工会のような経営者が集まる場に行くとよくわかります。
どの社長も真剣に苦悩を抱えています。
私たちは人間なのだから、当然です。
だからこそ、社員のみなさんに協力を請えばいいのです。
同じ仲間なのですから…。
紹介が出てきた時に聞いておくべき「質問」とは?
紹介依頼をして、何人かの紹介がある会社は社員との人間関係が良いものです。
組織の風通しもいいのかもしれません。
その場合、求職者を紹介してくれた社員に聞いておくと有益な質問があります。
「大切な友人・知人をなぜ会社に紹介しようと思ってくれたのですか?」
この問いに対する答えを集めていけば、社長や経営陣が思ってもみなかった会社の強みが現れてくることでしょう。
ぜひその点を大切にしながら、さらに伸ばしていってください。
紹介が全く出なかったときは、どうすればいいのか?
問題なのは、紹介依頼をしても全く紹介が出てこない場合です。
社長の紹介依頼の仕方が悪い場合は論外として、まずは紹介依頼に失礼がなかった時のことを考えてみましょう。
おそらく社員はこう考えていると想像できます。
「社長の言うことはわかるし、紹介もやぶさかではない。だが、こんな状態の職場に大事な友人・知人を巻き込むわけにはいかないよなぁ…」
これは実際に社内で紹介依頼を受けて、紹介しなかったとある社員さんが漏らした本音です。
全く紹介依頼が出ない場合、会社の現場は何か致命的な不具合を抱えている可能性が高い。
それを放置したままで、求人広告を打ち続けても何の解決にも繋がりません。
仮に採用できたとしても、すぐに離職されるのがオチだからです。
そして、また求人広告を打つことになります。
安直な打ち手を繰り返すだけのまさに「対症療法」に過ぎません。
必要なのは、根本から改善を図る「根治治療」です。
根っこにある「致命的な何か」を明らかにする必要があるのです。
そのために有効なものが「無記名の社内アンケート」だ。
現場の社員の声を集める無記名アンケート
現場のことは現場の社員が一番よく知っています。
だから社員に聞けばいいのです。
しかし、いくら事実を明らかにするためとはいえ、会社の悪いところや場合によっては特定の人物の改善点を暴くのは誰でも気が引けるものです。
だからこそ「無記名」である必要があるのです。
当然ながら無記名にすれば全てが解決されるわけではありません。
しかし、少なくとも記名式で建前だけの意味不明な意見を集めるよりは有効です。
無記名の社内アンケートが会社を救う
私の友人が勤めている会社での実話です。
長らくアルバイトの定着が非常に悪い状況でした。
社長には理由がわからなくて、「時給が低いせいなのだろうか…」と頭を抱えていたそうです。
しかし、とあるきっかけから社内で無記名のアンケートをとってみると、想定していたものとは全く違う声が上がってきたのです。
いじめです。
社長はアンケートに書かれていたこの三文字の言葉に愕然としていました。
この状況を所属長ですらもはっきりとは認識していなかったようです。
即刻社長が対応に動くと、定着率が大幅に改善したとのこと。
わかってしまえば、当然の結果です。
見えていない社内の環境を知るためには無記名アンケートが有効
人間は万能ではありません。
やり手の社長とはいえ、全てを自分で管理しきれるわけではありません。
社長が見えないところは、サポートをしてもらう必要があります。
そのためのきっかけを社内の無記名アンケートは担ってくれます。
ただし、無記名アンケートをとっても何もしないつもりであれば、アンケートはとらない方がいいのは明らかです。
「うちの経営陣は、問題がある現状を把握したにもかかわらず、何もしない信用ならない奴らだ」となってしまっては、取り返しがつきませんから。
とはいえ、そのような会社はどのみち働き手がいなくなって消滅するわけですから、放っておいても問題はないのかもしれませんが…。
もし求人募集でお困りの経営者・採用担当者がおられたら、一度でいいから、社内で紹介依頼をしてみることを強くおすすめします。
余計な金は一切かかりません。
ただ、真摯に依頼をすればいいだけです。
紹介が全く出なかった時の社内アンケートのテンプレ・ひな形
紹介が一切出ない時、どのようなアンケートをとればいいのかに困る会社も多いことでしょう。
私が使っている無記名アンケートを下記に公開しておきます。
興味があればどうぞお使いください。
人材紹介依頼のための 社内アンケート①
人材紹介依頼のための 社内アンケート②
無記名の社内アンケートの具体的な使い方
まずは「社長から紹介依頼を全社員にする」を実施します。
その後、1ヶ月は待つといいでしょう。
その間、週に1度は社長から全社員に紹介依頼のメッセージを伝え続ける必要はあります。
人は一度言われただけでは忘れるものですから。
そして、最初の紹介依頼から2ヶ月ほど待っても、全く紹介がなければ無記名アンケートの出番となります。
そこで、まずは①のアンケート「仕事を探している友人・知人に(自社)を紹介したいですか?」です。
この問いに対する答えに「いいえ」が多いようなら、紹介依頼をしても効果は見込めないでしょう。
加えて、求人広告を使って募集をしてもすぐに離職が発生することも目に見えています。
それでもとりあえず人を確保することが必要になることもあるでしょう。
しかし、残念ながらそれだけでは何も解決しません。
延々と求人広告会社が喜ばせるだけになってしまいます。
そうならないために、①のアンケートには理由を書く欄を設けています。
そこで社員の本音が少しは垣間見えるはずなのです。
そして、その中の一つでいいので、社員と一緒になって解決に動くことです。
ネッツトヨタ南国のように、アンケート結果を社内に貼り出せば、全社員と共有もできます。
もはや情報は経営陣だけのものではありません。
①で見えてきた問題について、何か一つでも解決に動き出せたら、②のアンケートの実施時期です。
設問は「この会社で働き続けている理由はなんですか?」というものです。
①では不満がたくさん集まるかもしれませんが、それでもなお働き続けているのも事実です。
続けるからには何か理由があるはずです。
それがわかれば「どんな人に来てもらえればいいのか?」「会社を求職者へどのように紹介すればいいのか?」などが見えてきます。
一度でいいから試してほしい
最後までこの記事を読んでくださった方は、だまされたと思って社内の声に一度耳を傾けてみてください。
回収したアンケート結果を見て「社員がこんなことを考えていたなんて…全く気付いていなかった」とショックを受ける経営者も少なくありません。
しかし、そこから劇的に会社を変えていった社長を何人も知っています。
会社に関わる全ての人々にとって、良い会社が増えることを切に願っています。