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性格適性検査を重視した採用は、組織を脆くする

適性検査

採用試験で、誰もが一度は経験するのが「適性検査」。

今では様々なサービスが販売されています。

しかし、性格を重視して採用の合否を決めることは、本当に組織を強くするのでしょうか?

2種類に大別できる適性検査

この適性検査は、大きく2種類に分けられます。

 

  • 一般知能検査
  • 性格適性検査

一般知能検査は、学校のテストのような検査です。

内容もよくある国語・算数などの問題やIQテストのようなものもあります。

もう一方の性格適性検査は、パーソナリティー心理学の知見を活用し、求職者の性格特性で適性を測るものです。

厚生労働省は性格での合否を許していない

許していない
geralt / Pixabay

しかし、厚生労働省の指針により性格で採用の合否判断をすることは許されていません。

だからこそ、「性格検査」とせずに「適性検査」という表現をされています。

厚生労働省の指針を順守する熊本労働局のサイトにもこう明記してあります。

「血液型・星座」と性格とは科学的根拠に裏付けられたものではなく、職務能力とは全く関係のないものです。

引用元:熊本労働局|公正な採用選考のために

にもかかわらず、昨今では性格適性検査が企業側で強化されています。

入社後に鬱などを発症されると困るので、そのリスクを少しでも回避したいがためというのが大きな要因です。

性格による選別はおすすめしない

私も「真に意義ある採用手法」について真剣に研究する過程で、この適性検査についても調べていました。

現時点の結論としては、職務適性を性格で判断することはおすすめしません。

かといって、厚労省におもねるわけではありません。

脆弱な組織を形作る原因になることが判明してきたからです。

組織の均一化は脆さと紙一重

特定の性格の人を集めると、どんな組織になるのでしょうか?

例えば、ある組織が外向性の高い人を好んで採用し続けたとします。

この採用方針からもっと外れていくのは、神経症傾向が低い方でしょう。

すると、どんな組織になるでしょうか?

次々と新しいことを始めるばかりで、内省をしない傾向に傾いていくでしょう。

また、日々の業務に潜む、様々なリスクに気づくことも少なくなります。

いつか、大きな事故やトラブルに見舞われることが安易に想像できます。

その逆もまた然り。

神経症傾向が高い人だけ集めてしまっても、問題は起こります。

思考が偏るだけで、実際の動きに昇華できないままになるかもしれません。

結局、どちらの特性も組織にはいてくれた方がいいのです。

「うちの営業部で成績を上げている人はこういう性格の人が多いから、同じような人を集めよう」
という単一化は、大きな脆さを内包します。

自然界では当たり前

これは自然界では、ごく当たり前に起こっていることです。

生存競争の厳しい自然界では、多様性が生き残る術。

ビッグファイブ理論で表せる5つの性格特性因子は、それぞれの特徴の持ち主が協力しあうのが有効なのです。

性格適性検査は、選別に使うことは有効ではありません。

むしろ、自分とは違う他者を理解し、協力関係を築くツールに使うものです。

管理のしやすさを優先し、脆さを許容する?

たしかに、確かに均一の方が管理しやすくなります。

経営者が優秀な間はそれで持つでしょう。

しかし、拡大成長していくうちに、いつかは経営者の目が届かないところが出てきます。

管理型には限界があるのです。

そもそも、管理できないことが世の中にはあまりに多いのですから…。

性格は選別よりも活かし方を見出すことに使う

さまざまな研究者の知見が切り開きつつあるパーソナリティ研究。

選別にだけ使うのはあまりにもったいないです。

自分と違う他者との協力をするために、ぜひとも活用してください。

選考時に適性検査を課すのではなく、入社時にこそ実施するといいでしょう。

配属される部署の全員がお互いの特性を知ることこそが有益です。

多様性を許容するために「違いの見える化」が有効ではないだろうか?

多様性

高さ170cmの棚に、他者の背丈が届かないことで怒りを覚える人はいるでしょうか?

多くの人は「身長によっては届かなくても仕方ないよね」という理解をするだけでしょう。

日常生活の中でも、身長の低い人が高い人に「タンスの上の〇〇を取って」と依頼することは、ごく自然なものです。

ところが、これが「性格」となると話が全く違ってきます。

「わからない」ことがトラブルを生む?

「身長」という特徴は、物理的なもので誰が見てもわかる違いです。

だからこそ、健全な諦めが可能です。

一方、性格は見ただけではわかりません。

この「わからなさ」が人間関係の様々なトラブルの温床になりがちなのです。

例えば、ビッグファイブ理論における特徴の違い。

外向性が高い人は、自分の外部に刺激を求める傾向にあります。

  • 人がたくさん集まるパーティーが好き
  • 絶叫マシンのような激しいアトラクションを好む
  • 一夜限りの恋を求めることもある
    (他の4つの因子とも関連するので、外向性だけでは決まりませんが、あえて単純化します)

外向性が低い人からすれば、外向性が高い人の上記のような行動は理解ができません。

性格への遺伝の影響を知らなければ「なんであいつはいつも落ち着きがないんだ!」とただ怒りを覚えるだけになることもあるでしょう。

しかし、相手を突き動かしているものの半分が「遺伝」だとわかると、しぶしぶながらもある程度は「仕方ないよね…」と健全な諦めに至ることも多いのです。

身長の高さという身体的特徴を変えようとしないことと同じで、相手を変えようとしなくなることの方が有益なことは少なくありません。

変えにくいものに注力するよりも、変えやすいものに注力した方が明らかに効率的ですから。

遺伝が影響するのは、身長9割、性格5割

双子
AdinaVoicu / Pixabay

遺伝の影響を研究する分野では、別々に育てられた一卵性双生児研究の類似性があります。

その研究の結果の一例として

身長では9割、外向性などの主要な5割、推理や空間把握能力は4割台、記憶や言語能力では3割台

引用元:『だまされ上手が生き残る 入門! 進化心理学』P.63

という説があります。

「身長が決まる要因の9割が遺伝の影響」だということに、違和感を覚える人は少ないでしょう。

だからといって、全く変えられないわけではありませんが、非常に変えにくいものであることも事実でしょう。

一方、性格は5割。

半分ですから、これを多いと感じるか、少ないと感じるかは人それぞれでしょう。

どちらにせよ、人間の性格の半分が遺伝の影響を受けているというのは事実です。

遺伝的な影響を「見える化」するのがビッグファイブ理論

その生まれ持った特徴は、日常では断片的に「行動」として垣間見えるだけです。

数値として「見える化」するために有効な一つ手法がビッグファイブ理論なのです。

実際、パーソナリティ心理学を学ぶことで、人付き合いはとてもラクになります。

自分と違う人の行動パターンを許容できる幅が増えます。

私の友人に、非常にマイペースで行動的な人がいます。

ただ、ちょっと周囲への配慮が薄く、マイペース過ぎる傾向にあります。

以前の私であれば「あいつはなんでこうなんだ」と怒りを覚えていたことでしょう。

しかし、今では「外向性と経験への開放性の高さと、共感性、神経症傾向の低さがあの行動を生んでいるんだな」と理解できます。

ある程度行動パターンを理解できるからこそ、行動を予測して準備やフォローも可能となるのです。

相互理解が他者との協力の基盤となる

お互いが違いを把握していれば、「なんでアイツは!」という怒りを覚える機会は大幅に減ります。

身長と同じで、後天的にあまり変えようがないものに対して、怒りを抱くことは少ないものです。

「なんでアイツは身長が低いんだ!」と怒ったところで、何の意味もありません。

また、不用意に「相手を変えよう」ともしなくなります。

「変えよう」というのは、部分的には「現状の否定」でもあります。

否定しにかかってくる人間と良好な関係を結べる人は、きわめて稀なもの。

不用意に他者を変えようとアプローチをすることは、トラブルを量産するだけです。

他者との違いを理解できるようになることが多様性と付き合える入り口となるでしょう。

身長のような見ればわかる違いが問題になることはありません。

性格はすぐに目に見えないからこそ、できる範囲の数値化が有効ではないでしょうか。

 

『だまされ上手が生き残る 入門! 進化心理学』
著者:石川 幹人