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脳波をα波にすることは本当に効果があるのか?

PeteLinforth / Pixabay

「脳波をα波にする商品がいろいろあるけど、あれって本当に効くの?」という調べもの依頼をいただきました。

たしかに、単に検索するだけでも「α波を出してリラックス!」みたいな商品やサービスはたくさん出てきます。

  • 勉強法
  • ストレス解消
  • 運動で高いパフォーマンスを出す
  • 安眠
  • 能力開発

などに効果があるのだとか。ずいぶんと万能です。果たして、本当に効果を期待できるのでしょうか?

脳波の計測は、医療分野でも実績がある

そもそも、脳波とはいったい何なのでしょうか。

大脳の神経細胞(群)の電気活動を体外に導出し、記録したもの。

引用元:岡山大学病院 検査部

脳内の細胞の働きが電気信号を有するので、それを頭皮につけた電極で計測したものなのです。ただ、髪の毛だけでなく頭蓋骨や肌などを通して計測するので、様々なノイズが混じるようです。

しかし、それでもなお医療分野で診断に使われているくらい、真剣に研究されている分野です。応用できる分野も増えてきています。

脳波検査は、てんかんの診断・病型判定、けいれんや意識障害の評価、器質性脳障害や睡眠異常の診断等に用いられます。

引用元:日本赤十字社 姫路赤十字病院

脳波の一つが「アルファ波」

脳波にはその周波数によって、分類をされています。その一つが今回のテーマとなっている「アルファ波」です。

脳波は周波数によって、α波、β波、θ波、δ波に分類されます。

引用元:日本赤十字社 姫路赤十字病院

それぞれに特徴があるので分類され、一定の意味を持たせて、観測されているのです。中には、α波とβ波をさらに細分化し、「スロー・ミッド・ファスト」の3つに分類している研究もあります。

一般的に、それぞれの脳波が観測されやすいのは以下のような状態とされています。

δ波(デルタ波),1~4Hz,睡眠時
θ波(シータ波),4~8Hz,睡眠時・注意時
α波(アルファ波),8~12Hz,リラックス・閉眼時
β波(ベータ波),15~20Hz,集中・運動時
γ波(ガンマ波),30~Hz,記憶・視覚処理時

引用元:簡易脳波計による記憶作業における脳波状況フィードバック学習システムの試作

α波がリラックス時に観測されること多いことから、「α波は体に良いのだ」とするのが冒頭で調べた商品やサービス記事の主張です。

「α波はリラックス」だと言い切る論文が見つけられない

しかし、これが研究者が書いている論文になると、表現が少し変わります。

α波はリラックス時,特に閉眼時に現れやすいとされており,β波は複雑な思考をしている時や緊張時に現れやすいとされる。

引用元:脳波計測実験のための簡易で安価な環境構築

という表現になるのです。あまり違いがないように見えますが、明らかに違うのは断言していない点です。

他の論文を読んでみても、「一般的にα波が優勢な状態は、リラックスしていると言われている」という類の表現が多いのです。

結局、私の調べ方では「α波はリラックスしている証拠だ」と言い切っている論文は見つけられませんでした。

むしろ、α波だけによる判断を否定する文献がある

むしろ、最近の論文になると、今までとは違った解釈をしているものが見つかります。

脳波は個人差によって大きく同一人物でも時間帯・状況によって脳波と思考状態の関係は変化し、巷で言われているようなα波が見られればリラックスしているというものではない。

引用元:簡易脳波計による記憶作業における脳波状況フィードバック学習システムの試作

記事レベルでも以下のような記載が出てきます。

先行研究でアルファ波帯域が大きいと集中しているなどの定義がなされているが、これは、個人によってまったく異なっていることも明らかになっている

引用元:慶応大、好き嫌いや眠気などを簡単に測定できる簡易脳波計測器を開発

他にも、医療関係者を対象に、脳波を計測するような医療機器の使い方の研修をしている株式会社 メディカルシステム研修所のサイトにも以下のような記載があります。

α波は単に大脳皮質があまり働いていない状態に対応するものであって、出れば脳がどうかなるとか、体にいいということではない。

脳波の誤解? Q&A Q2;α波は出れば出るほど体にいいか?

こうなると、もはや「α波が出ているから良い状態」とは言えないのではないでしょうか。

現時点の私の結論「α波だけで判断できない」

いろいろ調べてみた結果、現時点の私の結論としては、

「α波は安静時に観測されやすいが、それ以外の時にも観測される。α波が出ていれば、脳に良い状態というわけではない」

というものです。

ネットで調べる以外に脳科学関連の書物も読んでみたのですが、脳については「わかってきたこともいろいろあるけど、わかってないことがものすごく多い」ということがわかっただけでした。

このような状況で、確かな根拠もなく「○○が脳に良い」と主張する商品やサービスは、疑いの目を向けざるをえません。

「疑似脳科学」に振り回されないために見ておくべき動画

脳科学と呼ばれる分野には、まだまだ怪しげなものが非常に多いのが現状です。そのことを問題視している研究者もおられます。

「なんちゃって脳科学」の実態を知りたい方は、下記の動画も合わせてご覧ください。

【脳科学】【精神医学】「でたらめ脳科学に気をつけろ」 モリー・クロケット ted 日本語字幕

 

こちらは『脳ブームの迷信』の著者である大阪大学大学院 生命機能研究科の藤田一郎教授の動画です。

脳の迷信 ~脳科学研究現場から見たブームの落とし穴~

 

今回の依頼者には

「効果があるという確かな根拠は見つけられませんでした。むしろ、脳のことはまだまだわかってないことがわかっただけです。」

と率直に調べた内容をお伝えしたところ、

「あ、やっぱり? 怪しいと思ってたんですよね~」

と軽い反応でした。やはり、怪しいと思うのが当然なのでしょうね。